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わかりやすいニュース 2021年10月号 外資系企業ストックオプションの税務

外資系企業ストックオプションの税務

(外国法人から付与されたストックオプションの税務)

2021年 10月

1.外資系企業は給与体系が異なる

よく言われることですが、外資企業は給与体系が日本企業と異なる場合が多いです。新たに設立された外資系日本法人などは、新規採用の日本人、外国人の混成部隊で編成されることが多く、とくにその会社のベテランプロパーではないという方が多数派ですが、その昇給額や賞与額には驚かされます。入社2年目くらいになると、当たり前のように昇給するケースも多く、昇給額や賞与支給額も日本の一般的な企業からすると、かなりの大盤振る舞いです。この辺りにも日本企業との勢いの差を感じます。また、ストックオプション(自社の株式を自社社員に一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利)が付与される場合もあり、通常は日本法人ではなく、上場している外国親会社のストックオプションが付与されます。今回はそのストックオプションの税務について解説します。

2.ストックオプションの税務の基本

ストックオプションは日本の税務上、①税制適格ストックオプションと、②税制非適格ストックオプションに分けられます。①税制適格ストックオプションの所得税課税は、権利を行使して株式を取得した際には課税はされず、その後、当該株式を売却した際に売却価額と権利行使価額の差額について譲渡所得課税が行われます。それに対し、②税制非適格ストックオプションは、権利を行使し、株式を取得した際に給与所得課税がおこなわれ、売却した際には売却価額と権利行使時の時価との差額について譲渡所得課税が行われることとなります。

3.外国親会社などの外国法人から付与された場合は?

こういったストックオプションは通常は社員が直接雇われている企業から付与されます。しかし、外資企業の場合は、直接雇用されている日本法人ではなく、上場している外国親会社等から外国親会社のストックオプションが付与されます。この場合の取り扱いはどうなるのでしょうか?

①税制適格か、非適格か?

税制適格ストックオプションは、日本の会社法に基づいて発行される必要がありますので、外国親会社が付与したストックオプションは通常は税制非適格となり、権利行使時に給与課税がされることになります。

②源泉徴収は?

①で権利行使時に給与課税されることになりますが、源泉徴収はどうなるのでしょうか?内国法人が自社のストックオプションを自社社員に付与した場合は、当該法人の社員に付与した訳ですので、給与として源泉徴収が必要となります。しかし、外資企業の場合、直接雇用されている日本法人とは別の外国法人からストックオプションが付与されており、日本法人が支給した給与ではないため源泉徴収は必要ありません。社員が自ら確定申告をする必要があり、その際に給与として申告、納税することになります。

③調書は?

「それなら日本法人はなにもしなくても良いのか。良かった。良かった。」ということかというと、そういう訳でもありません。日本法人は、「外国親会社等が国内の役員等に供与した経済的利益に関する調書、調書合計表」という書類を提出する必要があります。

4.社会保険は?

 なお、①で給与として課税されることになりますが、社会保険はどうなるのでしょうか?これは社会保険の対象とはなりません。労働法上の賃金に該当しないため、社会保険の対象とならないこととなっています。