個人の所得税外国税額控除
(控除余裕額の繰越と納税年度の控除の2年分の申告が必要な場合も)
2023年 3月
グローバル化に伴い、個人でも海外で所得がある方(給与や不動産、株式など)が増えてきましたが、その場合、外国で税金が課されることも当然あります。その際に、日本の居住者の場合、海外の所得についても日本の所得税が課税されますが、外国で課税された税金が日本の所得税と同じ性質のものである場合は、外国で納税した税金を日本の所得税から控除してもらえる制度があり、それが外国税額控除という制度です。理屈はすごくシンプルな制度なのですが、実務でやると面食らう部分がありますので、今回はそちらについて解説します。
1.外国税額控除制度概要 外国所得税が控除可能 付加価値税等はダメ
日本の居住者は全世界の所得について課税されますが、海外で同じような税金が課された場合、日本の税金と同じ税率までは日本の税金からひいてあげましょうという制度が外国税額控除で、所得税以外に法人税、相続税にもあります。なお、注意点としては外国で課された税金が、「日本の所得税と同じ性質のものであるか?」という点です。よくいただくご質問は、付加価値税や、土地増値税など所得税と性質と異なる税金を控除できますか?というものですが、こういったものは二重課税には該当しませんので、控除できません。
2.落とし穴 通常所得の発生と納税は同年度で対応しないので、国外所得発生年で控除余裕額の繰越が必要
制度は非常にシンプルなのですが、実務で面食らうのは、「実際に控除が受けられるのは外国税額を納税した年である」という点です。例えば2022年の国外所得について、日本では2023年3月15日までに確定申告をしますが、通常その所得に対応する外国税額は2023年に納税することが多く、発生と納税にズレが生じてしまいます。この場合は、発生した年度(2022年)では、外国税額控除の控除余裕額の繰越という申告を行い、実際に外国税額を納税した年度(2023年)で外国税額控除の適用を受けることという2ステップの申告が必要となります。
3.控除順序 所得税→住民税 住民税は政令指定都市の確認要
また、微妙にややこしいのが、日本は個人の所得に対する税金が「所得税・道府県民税・市町村民税」という3重構造であり、外国税額控除も所得税→住民税という順序で適用をすることになっており、自分の所在地が政令指定都市かにより税率の配分が異なるため(合計は同じです。ややこしい・・)、所在地の税率を所得税確定申告書に記入する必要があるというところです。これも最初見ると「何ですか?これは?」と面くらいます。(納税者に選択の余地があるものではないので、自動でやってくれれば楽なのになあと個人的には思います。)