(5,000万円以上の海外財産を有する場合提出義務あり)
2019年11月
2019年も年末が近づいてまいりました。我々会計事務所の者は、街がクリスマス気分になるこの時期は、また歳をとるなという感慨とともに、「そろそろ繁忙期だなあ」と少しそわそわした気分になります。冬の会計事務所繁忙期で確定申告や決算以外にも面倒なのは、「調書」という税金の納付を伴わない申告です。今回は、その調書のなかでも、最近導入された「国外財産調書」について解説します。
1.国外財産調書ってなあに?
国外財産調書という制度が2014年からあります。これはどういう制度でしょうか?年末に海外財産が5,000万円以上ある居住者は、翌年3月15日までに税務署に財産の内容を申告しなければならないという制度です。これは、他の調書と同様、提出するのみで、ただちに税金を支払うというものではありません。趣旨としては日本の課税当局にとって把握しにくい海外財産の保有状況を納税者自ら申告してもらうことにより、把握していこうというものです。
2.提出促進のためのアメとムチ
また、提出を促進するため提出した場合、その国外財産に係る所得の申告漏れが生じた場合の過少申告加算税の軽減や、逆に提出が無い場合は、加算税の加重がされることとなっています。もちろん、不提出そのものに対するペナルティもあり、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることになっています。不提出による罰則に関しては、今年初の摘発事例が生じ、話題となりました。
3.所得税、相続税申告との整合性
上記の国外財産調書の内容と、それに対応する所得の申告は当然ながら整合性が必要となります。相続対策が必要なレベルの方は、当該財産に係る相続税、贈与税の申告とも整合性が必要になりますので、そちらも念頭に置いて相続対策を行っていく必要があります。いずれにせよ、「海外所得の把握」は世界のどの税務当局もやっきになって取り組んでいる項目ですので、一昔前の「海外のことだからばれないだろう」という俗説的感覚は改めていく必要があります。