(繰越は別表添付がないとアウト!中堅企業が新設)
2025年 5月
2025年3月期決算より、「税理士泣かせの賃上げ促進税制改正」が施行になっており、弊社の3月決算でも該当するお客様がいくつかいらっしゃいましたので、ごちゃごちゃした明細書をいろいろ調べながら作成することになりました。今月は当該改正について解説します。
- 2024年4月1日開始事業年度(実質2025年3月期決算)より2025年度版 賃上げ促進税制 中小企業者等の繰越、中堅企業の新設
令和6年4月1日開始事業年度(実質的に2025年3月期決算法人)より、賃上げ促進税制にまた、改正が入りました。今年度の改正の目玉は、中小企業者等について税額控除余裕額の5年間の繰越がみとめられたというものです。また、中堅法人という新しいカテゴリーもできています。
- なぜ税理士泣かせか。繰越別表添付がない場合、無慈悲な切り捨て。赤字企業含めて全企業のチェックが必要
こちらの改正の「どこが税理士泣かせじゃ!中小企業者等の繰越ができるのはいいことじゃないのか?きっちり仕事せんかい!」と思われるかもしれませんが、厄介なのは繰越について法人税申告書に明細書の添付を忘れると事後で提出しても要件を満たさなくなるため、税額が発生しない赤字事業年度でも必ず明細書を添付しなければならないという点です。つまり、従来は法人税額が発生している法人のみ賃上げ促進税制の検討をすればよかったものが、赤字法人も要件に該当するか集計、チェックして申告書に明細書添付をしなければならず、実質的に全法人について当該集計、確認作業が必要になるため、「税理士泣かせ」ですねという次第です。せめて、後から提出してもOKならまだ気が楽なのですが、なぜか無慈悲に切り捨てられてしまうことになっています。
- 中堅企業 また中途半端に面倒・・ 前からあるけど「くるぼし」「えるみん」も上乗せあり 「おちゃらけ系 新ジャンル」が最近多くないですか・・
また、中堅企業(特定法人)という新カテゴリーができまして、これは中小企業者等に該当しないが、従業員数が2,000人以下でかつ、支配関係がある場合、縦の支配関係(兄弟会社を除くイメージ)で従業員数合計が10,000人以下である場合が該当し、税額控除率や要件が異なります。これができたせいで、また、前期まで大法人だったお客様(主に外資系が多いです)には、「縦の支配関係の従業員数は合計10,000人以下ですか?」などと質問しなければならず、そうするとまた外国の親会社から「縦の支配関係?あんた何言っているの?」という反応をいただくのが目に見えておりまして、また、手間が増えますなあといった感じです。そのほか、前からですが「えるぼし」「くるみん」等に該当すると、控除率の上乗せがあったりしますが、最近政府の政策にこの手の「おちゃらけ系 新ジャンル」が多くないでしょうか?どんどん数が増えて把握していくのが大変ですし、割とほったらかしになっているものも多いですので、この手の「プレミアムフライデー」とか、「認定経営支援機関」とか予算の割に成果が微妙なものはまとめていったん整理してほしいなと思います。
- 実務上の集計 中小企業者=全雇用者 大企業、中堅=継続雇用者
なお、実務上の集計方法としては、中小企業者は全雇用者(国内雇用者で役員等除く)、大企業、中堅は継続雇用者ですので、まずはカテゴリーをしっかり把握し、そのうえでできれば期中から集計しやすいように記帳していくのが良いのかなと思います。(友人の非常に専門性の高い先生が、この集計のためにだいぶ前から会計ソフトに補助科目で分類して記帳していると仰っており、すごいなあと感心したことがありました。)