(本国の相続法により相続。でも反致で戻ってくる場合も。)
2022年 8月
1.国際相続の難しさ 税金以前にそもそもの相続法(民法)が難しい
私と徳山税理士との書籍、国際税務三部作の最後の一作が国際相続・資産税であり、現在暇があれば国際相続関係の書籍や情報を読み、日々研究・お勉強をしております。お勉強をしていて思いますのが、国際相続では、相続税以前にそもそも相続法(日本では民法に記載)の関係が激ムズという点です。
2.被相続人が外国国籍者の場合 本国法により相続 法定相続人が日本と違う
どう難しいのかと申しますと、被相続人(亡くなられた方)が外国国籍の場合、日本では「法の適用に関する通則法」という法律により、日本の民法ではなく、被相続人の国籍がある国、すなわち外国の法律に従い相続することとされているためです。「だったらなんなの?」と思われるかもしれませんが、実は法定相続人の相続分や、誰が相続人になるかなどの法定相続人の定義は国によってまちまちです。また、日本のように戸籍制度がある国は世界的には少数派ですので、相続人を確定させるところから日本の知識だけでは話が進まず、かつ、相続人を調べ上げるだけでもかなり大変というわけです。なお、民法ではなく相続税法については全く別の話で、もちろん外国でも課税される場合もありますが、日本の相続税は日本の税法に基づき判定しますので、納税義務があれば外国国籍者でも国外財産でも容赦なく相続税が課税され、場合によっては二重課税が生じることになります。
3.ボールが日本に戻ってくる反致
さらにややこしいのが、上記で外国法に基づき相続するはずだったのが、一部の財産については「やっぱり日本の民法に従って相続してください」という話があるという点です。どういうことかと申しますと、上記の「法の適用に関する通則法」により、被相続人の本国の法律で相続しようとするのですが、被相続人の本国の法律が相続分割主義というカテゴリーに属する法律の国の場合、「不動産については所在地国の法律に従う」と定められている場合があります。この場合、被相続人が外国国籍者であっても日本の不動産については、また、日本の民法に従って相続するという反致と言う取り扱いになります。要は、せっかく、被相続人の国籍国になげたボールがまた日本に戻ってきてしまうわけです。さらに、この場合、不動産以外の財産は本国法で相続となっていたりしますので、財産別に相続をわけることになり、通常の国内相続に比べると格段にややこしくなるのはご理解を頂けるかと思います。
4.各国の相続法 大きく英米法系と大陸法系
遺留分がない英米法 被相続人の権利を尊重 筋は通っている
なお、各国の相続法は当然国により異なりますが、大きく英米法系と大陸法系にわかれています。日本の民法は大陸法系に属しますが、アメリカ、イギリス等はその名の通り英米法系です。英米法系の特徴は「遺言の自由」という原則があり、財産形成者である被相続人の権利が尊重されているという点です。逆に、相続人の権利は日本の感覚からするとかなりぞんざいに扱われており、遺留分という相続人の権利もない場合が多いです。ただ、財産形成者である被相続人の権利を最大限尊重するというのは、個人的にはいかにもアメリカっぽい感じがして、一本筋は通っているなという気はいたします。