(消費税がとにかく難しい、売り手が非居住者なら源泉所得税も大変、
会計上の税込み、税抜き処理も影響)
2025年 8月
不動産の購入時には当然ながら税務上の注意点がありますが、これが税法の複雑化と取引相手の多様化で年々とんでもなくややこしくなっており、会計事務所の職員の方でもかなりの方でないと多岐にわたる論点を全て網羅するのは難しいのではないかと感じています。実際、非居住者の源泉所得税から、消費税の適格請求書登録も踏まえた課税事業者選択の有利不利、居住用賃貸不動産の仕入税額控除の制限、調整対象固定資産の可能性に、課税売上の変動による今後の消費税負担への影響、借地権部分の確認など、総合的な税務知識がある方でないとどう考えても難しく、良識派の?税理士なら考えているだけでテンションが下がってしまいそうです。今回はそういった不動産購入時の税務上の注意点について考えてみたいと思います。
①売り手が居住者か非居住者か確認 非居住者の場合、源泉所得税の確認
最近増えている売主が非居住者の場合、購入側が購入対価に応じた源泉所得税の徴収納税をしなければならない場合があります。漏れてしまうとえらいことですので(税務当局は有無を言わさずまずは税法通り買い手が納税しなさいというスタンスです)、確認が必要です。また、売り手が非居住者ですと連絡や対価回収など注意しなければならないポイントも多いため、どちらかというと売り手が非居住者の場合は全面的にモードを切り替えて覚悟を決めて取り組んでいく必要があるのではと個人的には思います。
②消費税 適格請求書制度も始まり、めちゃくちゃ検討ポイントが多い
さて、本丸の消費税ですが、これがめちゃくちゃ論点が多いので、各論点別に考えていくのが良いかと思います。以下の通りです。
1.購入不動産の仕入税額控除関係
・適格請求書の有無、ない場合80%控除の可否、自身が宅建業者でないか
・居住用賃貸不動産の仕入税額控除の制限
・調整対象固定資産、該当の場合3年間トータルでの税負担シミュレーション
・課税業者の選択の有利不利、シミュレーション、適格発行事業者登録の場合期中でも課税への変更可
・土地は誰の所有か?借地権部分の確認(土地、借地権部分は消費税課税対象ではない)
2.購入不動産の賃貸収入の今後の消費税への影響
・不動産賃貸収入の課税、非課税の確認、課税売上割合への影響
・95%未満になる場合の課税、非課税、共通対応の区分の検討→調整対象固定資産とも関係
・簡易課税の可否、有利不利
3.購入事業者の消費税ステータスの確認
・課税か免税か、特定期間や親会社のデータも確認
③法人税 会計上の税込み、税抜き経理処理の減価償却への影響
あと、なんじゃこりゃという論点があるのですが、法人を設立してすぐ不動産を購入するような場合、日本の税法だと会計上、消費税税込み経理処理と税抜き経理処理が選択可能ですので、当然ながら経理方式により短期的な減価償却額は異なるのですが、これで短期的な法人税の納税に大きな差が出るケースもあります。これも検討し、お客様には説明しておくべきところかと思います。