2025年7月号 輸出入消費税 特殊論点


(輸出入書類の不備は、「でるとこでる」とだいたい負けています)

2025年 7月                   

先日ビズアップ総研様のオンラインセミナーで国際消費税をテーマに講演をさせていただきました。通常オンラインのセミナーですと、受講者の方はカメラをオンにされないケースが多いのですが、当該セミナーでは3時間の長丁場にも関わらず、カメラをオンにして姿勢を正して聞いてくださる方が多く(しかも受講者の方のほとんどが会計事務所の方です)、感動しましたのと同時に若干申し訳ない気持ちになりました。また、国際関係の消費税というのは、「ちゃんとやっている先生ほど悩むよな~」と改めて思いました。今回のセミナーのレジュメの作成でも、色々調べておりますと、「こんなのあるんですか?」と感じたものもありましたので、今月はそのなかでモノの輸出入の消費税に関するものについて解説をさせていただきます。

①輸出 郵便の場合 20万円以下と超で異なる

モノの輸出について輸出免税の適用を受ける場合、輸出取引に該当することについての証明が必要となります。通常の輸出貨物については、輸出許可書ですが、郵便で輸出した場合はどうなるのでしょうか?これが、細かいことに20万円以下と20万円超で書類が異なっています。

(消費税基本通達7-2-23)

1.20万円以下の場合

一定の事項が記載された郵便局からの受領証明などが輸出証明となりますが、

2.20万円超の場合

一定の事項が記載された税関長の証明書が必要となります。

なお、実際には20万円超のものを20万円以下と言い張って郵便局で郵送して1の書類の保存しかしなかった納税者が国と争った判例がありましたが、納税者が敗訴していました。「郵便局でも20万円以下として郵送できていた」と、郵便局に責任転嫁をするような若干見苦しい主張をしていましたので、個人的には仕方がないのかなと考えております。

②輸出 名義と実質の相違 友好商社 輸出免税不適用一覧表

また、輸出相手国の事情などにより、輸出申告者の名義と実際の輸出者が異なる場合は、下記の通り

輸出取引に係る輸出免税の適用者|国税庁

実際の輸出者が輸出申告書等の原本の保存と名義貸しに係る事業者に対して「消費税

輸出免税不適用連絡一覧表」を交付し、名義貸し事業者に売上へ計上しないよう指導をし(すごい条件ですが)、名義貸し事業者は上記書類の写しを添付することにより、実際の輸出者が免税の適用を受けることができるとされています。「税務は実質重視!」のイメージがありますが、輸出免税はここまでやらないと実質優先とさせてくれません。

③輸入 名義と実質の相違 限定申告のみ

また、輸入も実質輸入者が仕入税額控除をできる話がありますが、これは限定申告という関税法上実際の輸入者が輸入申告をできない場合等に限られており、かなり要件が厳しいですので、②の輸出の話とごっちゃにしないよう注意する必要があります。基本は、輸入申告を行った者が仕入税額控除を行うことになります。

輸入取引に係る輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱いについて|国税庁

 こちらも、「例外的に要件に該当する場合のみ、実質輸入者での仕入税額控除が認められており、一般的に実質的輸入者が控除できるわけではない。」と納税者が敗訴した判例があります。