2024年10月 グローバルミニマムタックスって何ですか?


(世界法人税!画期的だけど、関係のない企業の方が多い。移転価格文書の提出義務がある企業は注意。)

2024年 10月                       

 「グローバルミニマムタックス」という大きいのか小さいのかよくわからないネーミングの新税制が国際税務の世界では割と話題になっているようです。聞くところによると国際税務の専門誌なんかでは、毎号グローバルミニマムタックスの特集が掲載されているとのことですが、制度を調べてみますと「そこまで騒ぐ必要あるのかしら?関係のない企業が大半やん。」という気もしております。ただ、一方で、巨大外資企業グループの子会社などは情報提供が必要になるケースはありそうですので、今月はそんな話題先行型のグローバルミニマムタックスについて解説します。

1.グローバルミニマムタックスってなあに?

 巨大グローバル企業などが、軽課税国に拠点を設けて税負担の圧縮を図る行為を抑えるために世界主要国が協調して(BEPS)制度設計することにより設けられた制度です。簡単にいうと、子会社の税率が15%に満たない場合、満たない部分を親会社(日本)で課税できるという画期的な制度です。要は世界で課税最低税率(ミニマム)を決め、満たない部分は世界(親会社等の所在地国)で課税していくというある種「世界法人税」的な意味合いももつ、制度としてはすごい制度だと思います。

2.いつから適用になるの?

 日本では令和6年(2024年)4月1日以降開始事業年度から適用開始になりますので、最初の提出期限は最も早いケースで令和8年(2026年)9月30日(適用初年度のみ対象会計年度終了の日から1年6か月以内)となります。その後は、終了の日から1年3か月以内が提出期限となります。その際、必要な情報提供も行います。また、課税額が生じなくても対象企業は情報提供が必要となります。

 例えば3月決算の企業グループの場合は、 

・GM課税発生の場合は

令和7年(2025年3月期)のGM申告及び情報提供、令和8年(2026年)9月末まで、翌期以降は1年3か月以内までに申告及び情報提供、

・情報提供のみの場合は 

課税が発生しなくても、同上の期限内に情報提供のための資料提出が必要となります。

3.どんな企業が対象になるの?普通の中小企業は関係ないが、現在移転価格文書の提出義務がある企業は対象になる可能性が高い。

 グループの総売上高が4年間のうち2年間が年間7.5億ユーロ(1,200億円相当)以上ある企業グループが対象ですので、国際的大規模企業グループのみが対象となります。ゆえに、「日本の普通の中小企業のほとんどは関係ない」と考えてよろしいかと思います。ただし、外資企業グループの日本法人などの場合は、日本法人が小さくても関係する可能性があります。例えば、現在移転価格文書の提出義務があるような企業は、グローバルミニマムタックスの対象にも該当する可能性が高いですので、注意する必要があります。

4.タックスヘイブン税制との関係はどうなるの?

 税務の専門家として気になるのは、「いや、それってタックスヘイブン税制にすごく似てるやん。タックスヘイブン税制との関係はどうなるの?」という点です。これは私も気になって調べましたが、タックスヘイブン税制の適用がある場合、適用による課税額も税負担として考えるため、両方適用になるケースは少ないと予想されているようです。また、BEPSのグローバルミニマムタックスのうち、今回日本で導入された所得合算ルール以外のルールである軽課税所得ルール、国内ミニマム課税ルールはまだ日本では導入されておらず、今後改正で導入されていくという見方もあります。