2019年10月号 日中社会保障協定発効


日中社会保障協定発効

(8年越しの悲願達成といまだ残る地域差)

2019年10月                           

1.8年越しの発効!日中社会保障協定

 ついに、2019年9月から日中社会保障協定が発効となりました。中国で外国人の社会保険加入が義務化されたのが2011年で、当時の日系企業社会では上へ下への大騒ぎとなりました。結局、「日中社会保障協定の締結が急務だ!」という話になり、当時から政府間の交渉は開始されたのですが、日中関係の影響などもあり、実に8年越しでの発効となりました。2011年当時、私は中国に駐在しており、商工会等で多数セミナーをやり騒ぎの渦中におりましたので、今回の発効は感慨深いものがあります。ただ、それだけ歴史的なことではありますが、今回の発効が実務的にただちに全企業に影響があるわけではありません。

2.社会保障協定とは?中国養老保険、日本の厚生・国民年金のみ

 そもそも社会保障協定とは何なのでしょうか?社会保険制度のある国に外国人が就労すると、基本的にはその国の社会保険制度に加入する必要があります。これは、日本で働いてくれている外国人の方が、給与から社会保険料を天引きされ、日本の社会保険制度に加入していることをイメージいただくとわかりやすいかと思います。その逆パターンで、外国に駐在している日本人も赴任地の社会保険制度に加入し、社会保険料を納付するのが原則ですが、双方の国で同意すれば本国の社会保険加入のままでOKにし、二重加入にならないようにしましょうというのが社会保障協定です。社会保障協定は租税協定に比べ締結国は少なく、現在でも二十数か国にとどまっています。それが、日中で無事、締結、発効にいたったというものですが、対象となるのは、年金部分(中国養老保険、日本厚生、国民年金)のみです。

3.手続が必要かつ、まだ実務上徴収していない地域もあり

 なお、本協定の一方の国での徴収免除の適用を受けるには、本国での適用証明書の取得、赴任地での申請といった手続が必要になります。また、中国では地域により、そもそもの外国人への社会保険の徴収運用状況が異なります。実務的には徴収されてない都市もありますので、当該都市では本協定もただち影響があるわけではないこととなります。