中国本土・香港・台湾の相続税
(相続・相続税も各種各様【グージョングーヤン】)
第5号
2022年 9月
1.中国本土・香港・台湾の相続と相続税
前月に引き続き国際相続の書籍の執筆をしています。私の執筆担当地域は中国本土・香港・台湾になりますので、3地域の相続・相続税について調べていました。今回はそちらについて解説します。
2.相続税(遺産税)は台湾にしかない 遺産税申告書は日本の相続税申告書にそっくり
まず、メインテーマである相続税ですが、相続税に相当する税金は台湾にしかなく、台湾では遺産税という名称になっています。また、台湾の遺産税の計算構造は日本の相続税にかなり似ていて、生前贈与加算もあり、申告書の形式もそっくりです。
3.キャピタルゲイン課税はある中国本土と、それすらない香港
一方、相続税のない中国本土と香港ですが、キャピタルゲイン(値上がり益)に対する課税が中国本土はあります。例えば、相続人が相続により取得した不動産、出資金などを譲渡した場合は、被相続人の取得価額と譲渡価額の差額に対し、個人所得税等が課税されます。一方、香港はそれすらなく、キャピタルゲイン課税自体がありません。このあたりはさすが「ザ・タックスヘイブン地域」と感じます。
4.民法(相続法)も違う どの法律が適用されるかが重要
また、相続税以前に民法(相続法)もかなり異なります。台湾が最も日本の民法に似ていますが、それでも法定相続分などが異なります。また中国本土は法定相続人第一順位に親がおり、香港は英米法をルーツにもつためプロベート手続があります。ゆえに、被相続人、相続人が上記出身者である場合、まず適用法の確認が最重要といえます。