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とにかくわかりやすい!ニュース1 三証合一と中国現地法人の基本資料

1.三証合一とは?(一部部門の手続きは統一化されるが、他部門は相変わらず別。)

中国では2015年より経済活性化及び手続き合理化の改革の一部として、「三証合一」という制度改革が推進されています。【国弁発 2015(50)号】(これは、従来は7部門あった中国の外資系現地法人に係る当局の行政部門のうち、工商局、税務局、品質技術監督局については登記証を営業許可証に統一して手続きの合理化、簡素化を図ろうというものです。これは企業側にとっても設立手続きや、各種変更手続きが従来は部門ごとにおこなわなければならなかったものが3部門については統一した処理となるため、メリットがあるといえます。ただし、他の4部門(商務部、外貨管理、税関、財政局)は引き続き別の取り扱いとなることや、税務局については、三証合一後も、清算時の税務申告などは厳格に管理することが述べられています。【税総函 2015(482)号】

 

2.中国現地法人の基本資料とそのポイント(重要だが内容を把握していない会社も多い)

三証合一で一本化される営業許可証以外にも中国では様々な資料があり、種類も多いためわかりにくくなっています。現地法人の基本資料のうち、日本親会社、日本人駐在員が最低限把握しておきたい資料としては以下のものがあります。

資料名 発行機関又は契約者 ポイントと日本の対応概念
営業許可書 工商局 会社の基本情報が記載。日本の登記簿謄本に相当。
批准証書

※自由貿易区では廃止

商務局 営業許可証にない、出資者などの情報が記載。日本に同じ概念のものはなく、投資許可証といった意味。
定款 現地法人 日本の定款と同様。中国の行政手続時は定款との整合性チェックも行われる。
就業規則、労働契約書 現地法人と従業員 日本と同様だが、労働契約書は中国では義務。また、労働法による労働者保護が強いため内容も非常に重要。
監査報告書、月次財務資料 現地法人 日本の決算報告書、月次試算表に相当。精度を上げれば日本親会社レベルの数値管理も可能。

 

上記資料から把握できる情報もかなり多いのですが、日本親会社側では資料の回収すらしていない場合もしばしばみられます。また、注意しなければならないのは定款や就業規則などが「日本のものをほぼスライドして作られてしまっている」ケースです。ベースとなる法律が異なる中国で、日本の感覚で有給休暇などを設計してしまうと、中国で様々ないびつな問題を生んでしまうことになります。

 

3.日系企業実務でのポイント

三証合一は全国的には10月からの運用開始ですが、地方により実務進捗が異なるようですので、「全体としてはそういう方向に進みつつある」ということを認識のうえ、管轄地域の実務の進捗を見守っていくのが良いでしょう。基本資料に関しては全てが重要な資料ですので、一度回収して一通り目を通し、疑問点、問題点の洗い出しをしておくことをお勧めします。中国語のわからない日本親会社、日本人駐在員でもこういった資料の回収と質問をするだけでも、現地法人に対して大きな牽制効果があり、健全な現地法人マネジメントにつながっていくこととなります。