家族間の利息の税務
(個人は営利を追求する存在ではないので、
利息をとらなくても大丈夫か?)
2023年 11月
1.家族間でお金を貸した場合、利息をとらなくても問題ないか?
利息は税務上様々な問題が絡むため、我々税理士は「利息」と聞くと少しドキドキしてしまいます。利息がらみでよく悩む問題に、「家族間でお金を貸した場合、利息はとらなくて良いのか?」という論点があります。ネットなどでは、「個人は法人と異なり営利追及のために生きているわけじゃないから、利息をとらないのは個人の勝手だ!とらなくても税務上問題ない!贈与税が課税される場合がある等というアンポンタンがいるが、相手にするな!」的な言説をネット等でよく目にします。しかし、本当にそうなのでしょうか?
2.問題がない場合 相続税基本通達 課税上弊害がある場合
→課税されない場合のロジック。贈与税が発生する場合は利息を計上すべきでは?
実は税務上は、厳密にいうと問題があるケースがあります。というのは、個人は営利を追求する存在ではなく、家族間の関係は第三者とは異なる点は税務当局も認めていると思いますが、「そうは言っても限度があるでしょう」という考え方によるものです。具体的には、相続税基本通達9-10(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/06.htm#a-9_10)
に、「ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。」とあり、課税上弊害がない場合に限り無利息の借入についても贈与税課税はされないとされているためです。具体的に言うと、贈与税の基礎控除額が年間110万円ありますので、利息がこの金額内におさまるなら「課税する!」と言われても「だって基礎控除の範囲ですやん!」と言えますので、課税上弊害がないと言えるのではと考えます。例えば利率1%だと借入金が1億でも利息は年間100万ですので、金額的に言えば問題がないケースが多いと言えます。しかし、1億円を超える場合であるとか、すでに他の贈与で贈与税の基礎控除枠を使い切っている場合は贈与税の課税が発生しますので、その場合は課税上弊害があるケースという整理になるのではと考えています。
3.利息を取る場合 貸付者は雑所得で申告要 面倒だけどここまでやれば
利息を取る場合は、受け取った個人は雑所得として申告しなければなりません。「面倒くさいなあ」と思われる方もいると思いますが、そもそも家族間で資金の移動について借入にする理由は、借入金自体が「贈与ではなく、資金の借入である。ゆえに、贈与税を課税しないでください」と主張したい動機が大きいかと思います。それであれば、さらに利息も贈与税が課税されないよう適正にとっておき、利息の確定申告までしておけば税務署もなかなか文句は言えないと思いますので、ここまでやっておけば安心ではないでしょうか。
4.プラスアルファの疑問 無利子の借入が贈与とみなされた場合 貸付者にはみなしの雑所得課税(往復ビンタ)があるのか?
さて、もうひとつプラスアルファの論点です。無利子の借入が贈与とみなされた場合、貸付者への課税はあるのでしょうか?法人であれば、無利息で貸しつけた法人は、
税務上、(役員給与又は寄付金)/(受取利息)の無慈悲な仕訳が計上され、税務署お得意のダブルパンチ、往復ビンタをくらってしまうのですが、個人の場合はどうなるのでしょうか?これについては、所得税法では無償の役務提供に対するみなし課税はおこなわれないとされていますので、貸付者に対する課税はありません。