配当所得の所得税確定申告と住民税申告不要のコンボ
(お財布にやさしい所得税・住民税のコンボ技は
令和四年分確定申告が最後です)
2023年 2月
岸田政権は「資産所得倍増!」を掲げているそうです。資産所得が倍増すれば嬉しいなと思いますが、一方で日本はただでさえ労働力不足に陥っているのに、資産所得が倍増すると余計に働かなくなる人がふえるんじゃないかな?と心配したりもします。それとも政府は「本当に倍増するわけがないから、そんな心配はしなくてもいい。」と考えているのでしょうか。今回は、そういった資産所得に関する税制のうち、今回の確定申告(令和4年分)がラストとなる配当所得の確定申告と住民税の申告不要制度について解説します。
1.いいとこどりの不思議な制度 実は今回の確定申告(令和4年分)がラスト
株の配当所得は、20.315%(うち、所得税は15.315%)が源泉徴収されています。これは分離課税ですので、徴収されたままにしておいても問題ないのですが、所得税で確定申告をして総合課税で申告することも認められています。総合課税にすると、配当控除で配当所得の10%が控除されますので、他の所得の金額によっては総合課税で確定申告した方がお得になる場合があります。また、所得税を総合課税で申告しても、なぜか住民税だけ源泉徴収のままで申告しないことが認められており、住民税は源泉徴収5%のままで(住民税を申告すると5%以上の税率となります)、所得税の還付メリットのみを受けることができるという不思議な制度でした。ただ、こちらの制度は今回の確定申告(令和四年分)で廃止となり、来年からは住民税のみを申告不要とすることはできなくなりました。NISAやらIDECOやら拡充するからもういいでしょ!ということでしょうか。
2.配当所得の確定申告が有利な場合
さて、このお得な所得税確定申告、住民税申告不要のコンボですが、税負担上有利になるかどうかは、総合課税の所得税の税率によります。課税所得が900万円以下あれば、源泉徴収より有利になり、とくに課税所得300万円以下ですと住民税申告不要を選択すれば実質税負担が5%のみになりますので、なかなかお得です。なお、住民税申告不要を選択する場合、所得税確定申告書の所定欄にチェックをする必要があります。
3.住民税を申告する場合 国民健康保険料等にも注意
なお、住民税を申告する場合、税金だけの有利不利ではなく、国民健康保険料の所得判定などにも影響しますので、医療保険が国民健康保険の方などはそちらの要素にも留意する必要があります。
4.株主優待獲得のためのクロス取引愛好家にも有効
また、蛇足ですが株主優待獲得のためのクロス取引をやられている方にも配当所得確定申告は有効ではと考えます。株主優待獲得のためのクロス取引は、現物買いと信用売りをぶつけて、価格変動リスクなしに株主優待がとれるというチート技のようなものですが、この際、現物の買いで配当がカウントされる一方、信用売りで配当分が調整されてしまうため、「実質的な入金はないのに配当所得がふくらんでしまう」という現象が生じます。これにともなう現物の配当所得からは当然ながら税金が源泉徴収されており、この部分は「クロス取引に伴うコスト」とネット等では説明されている場合が多いです。しかし、確定申告をすれば一部取り返すことができますので、クロス取引愛好家にもこの制度は有効ではと思われます。