令和5年1月からの国外扶養親族改正
(30歳以上70歳未満は、38万円以上の送金書類が必要)
2023年 1月
令和5年1月から、所得税の国外扶養親族について、提出書類が一部厳格になる改正があります。今回はそちらについて解説いたします。
1.制度と改正概要
所得税の扶養控除は、扶養親族が非居住者であっても要件に該当すれば控除可能でしたが、非居住者については、少し前の改正により①「親族関係書類」、②「送金関係書類」の源泉徴収義務者への提出が必要とされていました。令和5年1月より、一定の国外扶養親族については、より厳格な資料提出が必要となったという改正です。
0022009-107_02.pdf (nta.go.jp)
2.30歳以上70歳未満の者は、留学生等を除き38万円の送金書類が必要
具体的には、まず扶養親族を年齢で①16歳以上30歳未満の者、②70歳以上の者、③30歳以上70歳未満の者に分けます。そのうち、③の「30歳以上70歳未満の者のうち、留学等に該当しない者(すなわち一般的な国外扶養親族です)は、従来から必要とされていた「送金関係書類」について、「38万円以上送金したことを明らかにする書類」を提出しなければならないこととなりました。要は、「30歳以上70歳未満の現役世代の国外扶養親族は、単純に送金しているだけじゃダメ。年間38万円以上送金していないと扶養控除はうけられませんよ。」という改正です。令和5年中に送金している必要がありますので、該当する国外扶養親族がいる方は、令和5年中に38万円以上送金し、その書類を年末調整時に提出しなければならないことになります。なお、配偶者控除に関しては、38万円送金書類は不要で従来の書類で大丈夫です。
3.国外→国外の送金はありか?
なお、一点面白い質問を頂戴しました。「38万円送金するのは良いが、日本から送金しなければならないのか?外国にも預金口座があるので、そこから国外扶養親族の口座に送金したいのだがダメか?」というものでした。これは海外勤務や実際に海外送金の経験がある方は気持ちがよくわかると思うのですが、海外送金が面倒かつ、手数料も高額であるためこういった方法はどうかと考えられたものと思います。しかしながら、念のため法令まで調べてみましたが、結論的にはやはりダメでした。法令に「国外送金等に係る調書の提出に関する法律に規定する金融機関(すなわち日本の金融機関)が行う為替取引(日本の金融機関が行う国内取引)による書類」と明記されており、日本の金融機関が行った国外送金でなければ要件に該当しないこととなっていました。