日中ダブル・ドタンバ・どんでん返し
(日中仲良く2年猶予)
2022年 2月
今月号のテーマは、日中ダブル・ドタンバ・どんでん返しです。タレントのDAI語風に言うと、D・D・D(Double・Dotanba・Dondenggaeshi)となります。内容的には、2021年年末に日中ともに2022年から適用される規定について、二年の猶予措置が発表になった件について解説しています。中国では弊社12月号ニュースでもお知らせした年一回性賞与、外国人に対する優遇措置の廃止が、あっさりウルトラCが発動され2年間延長となり、日本でも電子帳簿保存法の電子データの保存が「やむを得ない理由がある」ことを条件として、2年間適用の猶予が認められることになりました。なお、この「やむを得ない理由」を、お客様の中国系日本法人の中国親会社の財務部の方に中国語で説明する際、「なんでもかんでもOKと誤解されたら困るな」と思い、「若有合理的不能避免的理由(避けられない合理的な理由がある場合は)」と訳してみたのですが、「二重否定になっているし、自分でも何を言っているのかわからない文章だな。通じるのかな?」と心配していましたが、そこはさすが中国の管理系のプロ、「お前の言いたいことはわかるよ。ほいほい。」とあっさり理解していただけました。
1.中国 個人所得税 優遇2年延長
まず、中国の個人所得税の優遇措置が年次一回性賞与、外国人に対する優遇ともに2年間の延長が年末に発表となりました。一部では駐在員のマンションの契約を個人名義に巻き直せば、中国人と同じ住宅控除はとれるのではないかといった対策も話されていましたが、後2年間はこういった対策は不要となりました。
2.日本 電子帳簿保存法 電子取引の保存について2年の猶予措置
一方、日本でも同じような2年間の猶予措置がでました。この辺りのドタンバのどんでん返しは、かつては中国税務の専売特許といったイメージがあったのですが、最近はなかなか日本も負けてはいません。弊社11月号ニュースでも解説の通り、本年1月から電子取引は要件を充足した保存が求められていたものが、昨年12月27日に、国税庁から「やむを得ない理由がある場合、紙の保存を条件として2年間の適用猶予を認める」という改正省令がこちらもドタンバで公布されました。
3.2年後また違うこと言うんじゃないの?消費税インボイスも心配です。
上記の猶予について、納税者の立場としては「めでたし、めでたし」という反応が多いようですが、一方で、電子帳簿保存法については、「この2年の間にもうちょっとまともな内容に変えて欲しい」という専門家の声も見られます。なぜなら、猶予が発表される前に私も驚いていた対応策があるのですが、有名税理士の方が、「中小企業が電子データ保存に対応するのは無理だ!なるべく、紙の領収書を発行してくれる業者に代えるようにしましょう!極力電子データはやめて、紙に寄せていきましょう!」という裏技的な対応策を推奨されており、また、驚くべきことにそれが割りとメジャーな対応策として語られていたということがあったのです。私が思うには完全に「デジタル化を推進する」という電子帳簿保存法の趣旨と逆行していますし、「ルールを守ればいいんでしょ!はい!守りましたよ!」という、なんだか日本人の生真面目さが悪い風にでているなという気がするのですが、こんなことをやっていると「日本のデジタル化」は「そりゃ進まんなあ」と感じざるを得ません。政府もこのあたりの民間の事情も考慮しながら、実効性のある運用策を考えていただかないと、また変な裏技を生み、日本企業が無駄なところにエネルギーを使って、日本の国際競争力が無意味に落ちてしまう気がします。
さらに、令和5年10月には消費税インボイス(適格請求書)の開始が控えています。こちらの影響は、電子帳簿保存法とはケタ違いの破壊力がありますので、これもいったいどうなることやらと心配しておりますが、ある種税務の専門家としては少しだけ楽しみな部分もあります。こちらも、今後またいろいろと「プチ・どんでん返し」を含む新しい取り扱いが出てくる可能性があるのではないでしょうか。