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わかりやすいニュース 2021年12月号 2022年1月からの中国個人所得税優遇措置廃止

2022年1月からの中国個人所得税優遇措置廃止

(年一回性賞与と外国人優遇規定の廃止)

2021年 12月

2022年1月から、中国の税法でも変化があります。内容は中国の個人所得税で経過措置として認められていた優遇措置が、2022年1月からは廃止となるというものです。今回はその内容について見ていきます。(ただし、現時点では未確定ですが、土壇場で2022年以降も免税措置が継続になるのではという見方も現地ではあるようです。)

1.2022年1月以降の中国個人所得税の優遇措置廃止の経緯

2019年に中国の個人所得税の大改正があり、その際に旧法では非常にシンプルであった制度が、各種控除制度の追加や、年次計算制度の導入など、日本の所得税にも近いような制度に改められました。その際に、改正の趣旨からすると本来廃止すべきであった年一回性賞与の優遇や、外国人特有の優遇制度は、激変緩和措置の観点からか2021年までの期限付きで引き続き適用が認められていたものが、2022年1月以降は廃止になるというものです。内容として中国人・外国人共通のものと、外国人のみに影響があるものがありますので、その区別ごとに見ていきます。

2.中国人・外国人共通 年一回性賞与に関する優遇計算の廃止

まず、中国人・外国人共通で影響があるのが、年一回性賞与に関する優遇計算の廃止です。これは、旧個人所得税法では、税額の計算と累進課税税率の適用が月ごとに行われていたため、ひと月に高額な金額が支給される年一回性賞与(春節の賞与など)に対する税率を低めに抑えようというのが旧法での趣旨でした。ゆえに、新法では年次計算になるため理論的には当然廃止されるべき優遇措置ですが、中国の習慣に根差した賞与であることを配慮してか、引き続き当該賞与については、低い税率を適用するような処理が認められていました。これが、今回廃止になります。なお、余談ですが私は、これは中国人の方にも影響があるため、中国では大騒ぎになっているのではと思ったのですが、意外とたいした騒ぎにはなっていませんでした。理由を分析してみると、大多数の中国人の方にとっては、廃止による適用税率の差がそれほどないため、税負担もそれほど大きくなるわけではないということが要因のようです。逆に、高所得の中国人の方や、外国人にはそれなりに影響があります。

3.外国人のみ 住宅非課税等の廃止

もうひとつは外国人のみに影響がある廃止項目です。これは、旧個人所得税法では、外国人の社宅などは非課税とする規定があり、新個人所得税法では住宅賃借控除や、住宅ローン控除、扶養控除などが新設されたため、廃止になるかと思いきや、2021年までは選択適用が認められていました。これが2022年以降は外国人の優遇は廃止され、中国人も適用できる控除制度の適用のみとなるというものです。これは、外国人の税金インパクトはかなり大きい場合があります。高額な借り上げ社宅(高級ホテルのアパートメント等)を借り上げている場合、それが給与になりますので、累進課税での税率が高くなり、税負担がかなり増加するケースがあると思われます。

4.今後の対応 ウルトラCはあるか?

 上記についてどう対応すべきなのでしょうか?決まってしまったものなので、仕方がありませんが、地域ごとに運用差があることは予想される点と、3については、外国人の優遇は廃止されても、各種控除の適用がある可能性はありますので、そちらを検討してみるのも一案かと思います。ただし、こちらはこちらで要件や実務上の操作が必要ですので、そういった要件の充足ができるか確認が必須です。また、現時点では未確定ですが、優遇措置の延長というウルトラCがでるかについても、念のためフォローしていった方が良いでしょう。