あっと驚く過少資本税制、過大支払利子税制
(国外関連者への利息は要注意!)
2021年 5月
今回は国際税務の定番、過少資本税制について解説したいと思います。経済的実質は出資に近いのに、株主からの借入の形態をとることによって税負担を不当に減少させる行為を防止するための制度ですが、実務であまりでてこないため、突然でてくると焦るケースが結構あります。幣社でも、記帳、決算書作成は自社でおこなっているある程度の規模の外資系企業が、「税務申告だけお願いします」と決算書を持ってきた際などに、「親会社に利息をはらっておられますが、過少資本税制の対象になりますよ。本国でも同じような税法があると思いますから本社財務部にも御確認ください。」とお伝えすると、「ギャフン!」とびっくりされるケースがたまにあります。
1.過少資本税制とは?
過少資本税制とは、国外支配株主等の平均負債残高が資本持分の3倍を超えるときはその超える部分に相当する利子の額は税務上損金の額に算入しないというものです。簡単にいうと「資本金の3倍超を国外支配株主から借りている場合、超過分に対応する利息は税務上経費にできませんよ。」というものです。
2.過大支払利子税制(平成24年税制改正 平成25年4月1日以後適用)とは?
さらに、私が法人税法を勉強していた当時はなかった制度が追加されています。平成24年の税制改正で、関連者等に対する純支払利子等の額が調整所得金額の50%相当額を超える場合は、超える部分に対応する金額は損金算入できないというものです。ゆえに、本制度導入後は1の過少資本税制による借入金額による縛りと、2の過大支払利子税制による所得の縛りの二重の縛りができてしまうこととなりました。なお、1,2の両方に該当する場合は、いずれか大きい金額が損金不算入金額となります。
3.中国の日系現地法人で過小資本税制の適用があまりない理由
ところで、話は変わって中国の話です。過少資本税制は国際的な課税概念ですので、中国の税法にもあります。しかしながら日系現地法人の実務でお目にかかるケースはあまりないのではないでしょうか?これはなぜかと考えてみますと、中国には外債借入の限度額があり、自己資本に応じた借入限度額が定められているため、過少資本税制の条件に該当するほどの借入をしているケースが多くないからではと思われます。