コロナで日本から出国できなくなった海外駐在員はどこの国の居住者なの?
(183日を境に日中ともに影響大)
2020年 11月
先月号の「183日ぴったりだとどうなるの?」が、反響がありましたので、今号では、前号に関連する「コロナで日本から出国できなくなった海外駐在員はどこの国の居住者なの?」というテーマで、中国の駐在員を例にとって考えてみたいと思います。
1.実情 春節休暇から事実上の国境封鎖へ
中国の駐在員の方で、日本から出国できなくなったよくあるパターンは、春節休暇で日本に帰国しており、その後コロナにより、日中の入出国が制限されるようになり、そのまま日本から出国できなくなったというものです。「いつ中国に戻れるのか?」という状況が春先から続きましたが、実際は今秋にようやくビザを持つ駐在員は戻れることになり、一部の方は戻ったという状況のようです。
2.どこの国の居住者か?中国新個人所得税法による居住者の定義と実務
こういった場合、日本人駐在員はどこの国の居住者になるのでしょうか?中国では 居住者の定義が、「中国国内で満183日居住」となっていますので、こちらで判定することになります。なお、理論的には中国駐在員が、今年に限っては中国滞在期間が少ないため中国非居住者となることもあり得ます。その場合は、非居住者として申告することになります。
3.日本の所得税法上の居住者の定義
一方、日本の所得税の居住者の定義は、「国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること」という抽象的なものです。ゆえに、この状況下で、春先から秋口までべったり日本にいても、秋に中国に戻っているのであれば「日本の非居住者だ!」という主張はある程度は成り立つものと考えます。いったんは足止めをくらったにせよ、秋口に中国に戻ったような勤勉な駐在員は「日本の非居住者」とする処理で差支えないのではないでしょうか。
4.注意点は日本国内負担給与、日本国内滞在期間が183日を超過した場合
なお、日本国内負担給与がある場合は、日本の非居住者であっても日本滞在期間分については日本での課税は免れませんので、御注意ください。また、日本国内滞在期間が183日を超えると日中租税条約の適用がなくなりますので、日本の非居住者であったとしても、国内負担、国外負担問わず日本国内源泉所得は全て課税となります。ゆえに、今年はかなり複雑な申告となります。