中国現地法人から日本親会社への送金の基礎
(送金の種類の区別と課税関係の相違)
1.中国現地法人から日本への送金は難しいのか?
今回は日本本社からとくにお問い合わせの多い「中国現地法人から日本親会社への送金」について解説します。よく、「中国から日本への送金って難しいのでしょう?」という定番の御質問をいただきますが、これは正しいのでしょうか?こちらの答えは、「半分正しいですが、半分間違っています」というものになります。というのは、送金の種類によって、「なんの問題もなく送金できるもの」から、「難易度の高いもの」、「送金してはいけないもの」とに送金の難易度が分かれるためです。
2.種類別の送金の区別
送金の種類は大きく以下の3分類で考えるとわかりやすいと思います。
1.手続をへれば問題なく送金ができるもの
2.関係当局の許可取得や納税を行えば送金できるもの
3.送金してはいけないもの
の3つです。上記の3分類別の、一般的な例は以下のとおりとなります。
種類 | 例 |
1.通常送金できるもの | 通関済みの貿易代金、配当金、
駐在員日本円支給給与分 |
2.当局の許可取得や納税を行えば送金できるもの | サービスフィー、ロイヤリティー |
3.送金できないもの | 通関していない貿易代金 |
ゆえに、「中国子会社からの配当は難しいのでしょう?」という質問もよくいただきますが、これは誤解です。資料さえあれば問題なく送金できます。
3.「送金できたこと」と、「外貨管理上、税務上問題のないこと」は違う!
ただ、注意したいのは現在外貨管理手続が簡素化され、とくにサービスフィーに関しては1回あたりの送金額が5万ドル以下であれば送金の際に納税証明が必要とされないという点です。これは、「当然納税はしている」という前提で銀行側がチェックしないというだけで、「納税しなくてよい」というわけではありません。ゆえに、送金はできたものの後から税務調査で追徴課税を言われる例も最近増えています。(逆に現実的には送金の名目をごまかせば本来は送金できないものも今は送金できる状態になっているとも言えます。当然法令違反ですのでお勧めはできません。無理に送金して辻褄があわなくなっている例も時々目にします。)
4.日系企業実務でのポイント サービスフィーの検討
まずは、送金の種類を確認し、リスクのあるものは対策とリスクの許容度合を検討していくべきでしょう。とくに、サービスフィーの課税については地域によりかなり課税の運用や厳格さが異なりますので、送金する現地法人の管轄税務局の実務をよく確認する必要があります。なお、サービスフィーの課税実務は非常に面白いポイントが数多くありますので、また機会があれば詳しく解説をさせていただきます。