外国企業が日本で法人を設立した場合の税務上の留意点
(インバウンド歓迎といいつつ、実は日本もややこしい!)
2016年7月
1.インバウンドブームだが?ややこしいのは中国だけじゃない
日本企業が中国に進出する際、とかく「中国のルールはややこしい」という点が強調されます。しかし、逆に外国企業が日本へ進出する際は、「日本のルールはややこしい」と感じるようです。とくに、先日、欧米企業の対日進出を専門にやられている方から、外国企業が日本進出の際に非常な煩雑さを感じている話を伺い、欧米から見ると手続き的には日本も中国も「差不多」な面があるのかなとも感じました。とくに、「法人税の青色申告の申請を出し忘れて、初年度の欠損金を繰り越せない事例がある」という話は、確かにそんなの言われなければわからないだろうなと妙に納得しました。今どき白色申告する企業も少ないでしょうし、外国企業からすると、「ホワーイ!ジャパニーズピーポー!」と理解に苦しむ制度かもしれません。
2.税務上、設立初年度は要注意
というわけで、外国企業が日本で法人を設立した場合の設立初年度の注意点をまとめてみました。特に外資企業は輸出がメインのケースもありますし、消費税は注意したいところです。
①青色申告の承認申請
これを出さないと青色申告の特典が受けられません。特典といっても世界的な税務の感覚だと「当たり前じゃないの?」というものですが、日本では申請を期限内に出さなければ欠損金も翌期以降に繰り越せないという厳しい制度になっています。
②消費税の課税事業者の選択
資本金が一千万円未満なら設立から2年間は消費税が免税なのですが、設備投資や輸出売上が多い場合等、還付が受けられる場合はあえて課税事業者を選択した方が有利な場合があります。これも期限内に届出を出さないと適用を受けられないという厳しい制度です。
③役員報酬の設定
日本企業では出資者は通常法人の役員になりますが、彼らに対する給与は役員報酬として原則として一年通じて同額である必要があります。これも損益計画から役員報酬月額を検討する必要があります。
3.ようこそ日本へ!外国企業を応援します!
上記の通り設立初年度から手強い日本の税務ですが、私も中国で御世話になりましたので、日本でルールを守って頑張る外国企業はしっかりと応援していきたいと思います。「なんでそうなるの?」とお悩みの外国企業の方は御相談ください。