香港来料加工法人と日本のタックスヘイブン対策税制
(ちょいと不思議な形式的判断)
2019年9月
香港は代表的な日本のタックスヘイブン対策税制対象地域ですが、適用除外要件に該当した場合は軽課税地域であっても適用されません。タックスヘイブン対策税制問題で有名なものに、香港の来料加工法人について、日本のタックスヘイブン対策税制が適用になるか否かというものがあります。今回はその問題について考えてみました。
1.有名な問題 香港来料加工法人タックスヘイブン問題とは?
タックスヘイブン対策税制とはそもそも軽課税地域(日本より法人税の安い地域)に子会社を設け、そこに所得を形式的に移転することにより、本国での租税負担を不当に回避する行為を防ぐべく設けられた措置です。本来の趣旨としては「形式的な租税回避目的の所得の移転」を防止するための措置です。
2.日本の課税庁の主張、製造業であり、工場は香港にない
香港来料加工法人問題では、経済的実態を有する適用除外要件に該当するか否かが争点となっています。日本の課税庁は、香港法人は製造業であり、製造業の場合、所在地国基準というもので適用除外要件を判定するため、「工場が香港にないじゃないか」ということで適用除外要件には該当しないという主張です。
3.確かに製造業だとは思いますが・・
上記に対して、納税者側は、「製造業じゃなく卸売業だから所在地国基準は適用されません」と主張した事例もありましたが、認められませんでした。確かに客観的にみると、来料加工香港法人は製造業と解釈するのが自然と私も思います。ただ、一方で「香港に工場がない。だから所在地国基準を満たさず、タックスヘイブン対策税制の対象だ!」というのは、少し乱暴な論理展開ではないでしょうか。現地政府の指導で中国大陸側に工場を持っているだけですし、中国大陸側でも実質的に税負担をしていますので。
4.来料加工工場の現地法人化が日本の法人税法上も望ましい?
中国政府の政策として、大陸の来料加工工場の法人化が推し進められてきましたが、現地法人化すると日本のタックスヘイブン対策税制問題もなくなりますので、図らずも日本の法人税法上も来料加工工場を現地法人化した方が税務リスク軽減につながるような格好になっています。