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わかりやすい!ニュース2020年10月号 中国滞在183日ぴったりだとどうなるの?

中国滞在183日ぴったりだとどうなるの?

(中国新個人所得税法による居住者の定義と、日中租税条約の激突?)

2020年 10月

最近、以前出版した書籍の改定版の執筆をしており、中国の新個人所得税法を研究しておりました。そのなかで、一点、面白いポイントを発見しましたので、今回はそちらについて解説します。

1.中国新個人所得税法による居住者の定義

居住者の定義が、中国新個人所得税法では、中国国内に住所を有しない者(外国人)については、「中国国内で満183日居住」と定められました。これにより、出張者、駐在員に関わらず183日以上となると中国居住者となることになります。

図 183日以上出張者の中国個人所得税改正前後比較

項目

改正前

改正後

中国滞在期間が183日以上となった出張者 非居住者 居住者

2.日中租税条約の短期滞在者免税

一方で、日中租税条約の短期滞在者免税の日数要件は、従来通り、「183日以下は短期滞在者免税の適用あり」となっています。

3.183日ちょうどだと、どうなるのか?

そうすると、我々専門家からすると気になってしまうのが、①本法は183日以上が居住者、②日中租税条約では、183日以下の非居住者は短期滞在者免税の適用ありとなっているので、「183日ぴったりだとどうなるの?」という疑問です。教科書的には、「本法と租税条約がバッティングしたら、租税条約優先!」となりますが、本件は不思議なトリックがあります。

4.カウント方法の違いにより、発生しない幻の日

 詳しい方と検討したところ、実は、入出国について、①本法は24時間以内の中国滞在はカウントせず、②日中租税条約は入出国日も1日としてカウントとなっているため、「183日ぴったり!」というのは、存在しない概念であるとの結論にいたりました。本件が気になっている専門家も結構いましたが、「発生しない幻の日」のようでした。