法人税法上の繰延資産
(礼金も任意償却)
2020年 5月
「繰延資産」という勘定科目があります。これが、専門家以外にはわかりにくい概念なのですが、「支出したけど、その効果が将来にわたって発現されるもの」などと定義されています。「それって前払費用じゃないの?」と思いますが、「前払費用は除く」とこととされており、また、会計上の繰延資産と法人税法上の繰延資産は概念が異なります。実務上、税理士でも「そうだったっけ?」となる場合もありますので、今回は法人税法上の繰延資産について解説します。
1.法人税法上の繰延資産とは?前払費用は除く。
「法人が支出する費用のうち、支出の効果が一年以上に及ぶもの(前払費用を除く)」が、法人税法上の繰延資産に該当するとされています。「それって前払費用じゃないの?」と思いますが、前払費用ではなく、具体的には「創立費、開業費、資産を賃借し又は使用するための費用」等が該当します。
2.実は、不動産の礼金、保証金償却部分も該当
「資産を賃借し又は使用するための費用って何」?と思いますが、賃借不動産の場合の更新料、礼金等が該当することになっています。会計上は長期前払費用などに計上することも多いため、専門家でも「そうだったっけ?」となる場合があるようです。
3.任意償却
「法人税法上の繰延資産に該当するのはわかったけど、だから何なの?」と思われるかもしれませんが、大きなポイントは固定資産の減価償却と同様、法人税法上の繰延資産の償却は任意償却であるという点です。ゆえに、償却限度額の範囲内の償却額(損金経理した金額)のみ、損金算入が認められ、償却しなくても税法上は問題ありません。また、法人税申告書別表にも記載欄があります。ゆえに、「青色申告書を出し忘れて、今期は白色申告になっちゃったけど、大赤字です」というような場合、無理に償却しないという判断もあり得ます。