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わかりやすいニュース 2019年8月号 民法における配偶者居住権の創設

民法における配偶者居住権の創設

(自己居住住宅の相続分を救済)

2019年8月

平成30年7月に民法が改正され、配偶者居住権が新たに創設されました。

これにより、配偶者が住み慣れた家に住み続けやすくなり、老後の生活の安定につながるではないかと期待されています。(2020年4月1日施行)

1.配偶者居住権とは

所有権という権利を「住む権利」と「その他の権利」に分離して別々の人が相続することを認める仕組みです。配偶者には「住む権利」を、その他の相続人には「その他の権利」を相続させる事が可能になりました。

配偶者居住権は登記が可能であり第三者に対抗することができますが、譲渡することはできません。また配偶者が死亡した場合や建物が消失した場合には権利は消滅します。

これは、従来は自宅を相続してしまうとそれが相続財産としてカウントされ、相続した配偶者としては、「もとから住んでいた自宅を相続しただけなのに、相続分の大半を消費してしまう」という現象が生じていたのを緩和する効果があります。

2.具体例

たとえば3000万円の自宅と3000万円の預金を持っていた甲さんがいました。甲さんには妻(乙)と息子(丙)さんがおり、甲さんが亡くなり、相続が発生したとします。

従前の相続では、妻である乙さんがこれまで暮らしていた自宅に今後も住み続けたいと考えた場合、法定相続分通り相続すると、自宅3000万円を相続してしまうと、3000万円の預金は全て息子(丙)さんのものとなり、預金を相続できなかった乙さんは今後の生活がなりたたなくなっていました。

  今回の民法の改正により、妻である乙さんは配偶者居住権を使い、配偶者居住権1500万円と預金1500万円を相続し、息子(丙)さんは居住建物の所有権1500万円と預金1500万すると、自宅で住みながら、その他の預金も得ることができるようになり安心して自宅に住み続けることができるようになりました。

3.評価について

また、相続税法上の評価は配偶者については、一定の算式により計算した配偶者居住権の価額を配偶者の相続財産として評価し、配偶者居住権が設定された不動産については、その価額を控除した金額を、不動産の評価額とすることができます。

4.おわりに

配偶者居住権の創設により配偶者の住まいが保証できるメリットがありますが、一方居住建物の所有権を取得したその他の親族は、配偶者居住権が消滅した場合はその親族のものとなりますが、配偶者居住権が存在するかぎり売却することもできず、相続税・固定資産税などの税負担も生じることとなります。 そういった事も踏まえ、長期的に「相続」を考えていく必要があります。