中国個人所得税法大改正
(日本の所得税風の計算方式となる歴史的改正)
2018年10月
1.ついに!年次計算、各種控除、総合課税の導入
中国個人所得税法改正に関する決定(中国主席令第九号)により、2019年1月1日から改正中国個人所得税法が施行されることになりました。この改正は、年次計算、各種控除、一部総合課税制度の導入と、従来のシンプルな中国の個人所得税計算から、日本の所得税風の複雑な計算に変わるというというある種歴史的な改正です。マクロ的には、もともと庶民を徴税ターゲットにしていないためシンプルであった個人所得税制度を、富裕層、中産階級の増加に伴い、各個人別の担税力に応じた課税制度にしていきたいという背景があると思われますが、中国駐在時、中国の個人所得税研究に力を注いできた日本人税理士としては、「ついにこっちの世界にきたのか」と感慨深いものがあります。なお、所得税については今回の改正で中国が日本の制度に近づきますが、消費税についてはインボイス制度の導入で日本が中国の増値税的(というか世界の付加価値税的)要素を取り入れるというのが面白いところです。
2.居住者の定義変更 満183日は居住者
なお、今回の改正で中国ビジネスを行う日系企業に影響が大きいものとして、「居住者の定義が変わった」という点があります。これは、居住者の定義が従来は満一年であったのが、満183日に変更になったというもので、これにより従来は中国では非居住者扱いであった183日超の出張者が、中国でも居住者扱いとなり全世界課税が適用され、いわゆる「二重居住者」の問題が生じることとなります。
3.2018年10月からの部分適用、2019年1月からの全面適用
なお、当該改正の適用は2019年1月から全面実施ですが、基礎控除や新税率表への変更は先行して2018年10月から行われます。改正の実施は、政府が大方針を決めて、実務的な詳細は徐々に調整するといういつもの改正のスタイルですので、詳細は今後発表になっていくものと思われます。