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わかりやすいニュース 2016年6月号 海外赴任規程の実践的活用方法

海外赴任規程の実践的活用方法

(凝りすぎずに、真に会社と駐在員を守る規程を!)

 

2016年6月                                     森村国際会計事務所

 

1.海外赴任規程の実情 給与の混乱が多い

日本で国際相談業務をしておりますと、「海外赴任規程」に関するニーズが多いことに気づかされます。就業規則のように法律で要求されているものではありませんが、イメージとして「海外駐在⇒海外赴任規定を作らなきゃ!」というものが日本企業にあるようです。実際、書籍やネットでもたくさんの海外赴任規定に関する情報がありますが、実際に駐在経験を持つ税理士である私からすると、「?」となってしまう内容のものも少なくありません。とくに、給与の支給は、税務は日本と国外で、各種手当と支給通貨を法人税と所得税両面で検討が必要であり、さらに社会保険も絡むため実は非常に複雑です。ゆえに、規程の内容自体が混乱しているケースも少なからずあり、不要なコストや駐在員に不利益が生じているケースもあります。

 

2.世界的大企業のサンプル規程と多方面からのアプローチによる混乱

なぜこういうことになったのかと考えてみますと、赴任者規程の整備は人事部等が作成するケースが多いものの、実際は、検討しなければならない論点は、①日本の税務(法人税、所得税)②赴任国の税務(企業所得税、個人所得税)、③社会保険(日本、赴任国)、④これらを踏まえての給与及び各種待遇の設定と、非常に多岐にわたるのも一因ではと考えています。また、書籍で紹介されているのも世界的大企業を前提としているようなものが主で、赴任国が1国の場合は不要な「都市別物価指数(ビックマック指数みたいなもので、見ている分には面白いですが)」の調査や手当の設計などに多大なエネルギーを割くことになったりします。(駐在国が1国といった場合は、こういった指数は不要で手当等もシンプルな設計が良いと考えます。)また、中国で一昔前にはやった出向者PEの論点も混同されており、ここも中途半端に配慮した規程になってしまっている場合もあります。

 

3.各種手当より大事なものがある。時には戦士を労わろう?

こういった教科書的な規程にエネルギーを割くよりも海外旅行傷害保険に入ったり(中国では必須です)、手当で応えていくのは限度があるにせよ、赴任、帰任休暇等を整備してフォローしたり等、真に駐在員を労わりつつ、会社を守っていくような規程を作っていきたいものです。とくに、実際、赴任や帰任を経験された方はおわかりかと思いますが、赴任、帰任の前後は体力的にもかなり消耗しますので、やはり一週間くらいは任地になれてから勤務開始とさせてもらいたいのが人情です。ここを、「帰任初日から働け!」とやってしまうと、駐在員は「本社の君にはわからないよ」といった心境に陥らないとも限りません。(笑)

 

4.日系企業実務でのポイント 企業の海外戦略が柱に

海外赴任者規程は人事の規程ではありますが、根幹になっているのは企業の海外ビジネス戦略やそれを支える人材に関するポリシーです。表面的なものではなく、実際の駐在員が赴任から帰任までを想定した地に足のついた規程を作ると異国で働く駐在員の方も安心で、会社との信頼関係も保てるのではないでしょうか。